親告罪って知ってる?
はじめに
小出恵介の未成年淫行についてのニュースを見ていた友人が、
『あれ?無期限活動停止?逮捕されないの?』
と口にしたので
『ああ、それはね...』
と説明したところ
『え!?そんなことある!?かわいそう!』
と言われました。今日はそれについて書いてみようと思います。
実はアンケートをとってみた。こんな感じだ。
1番下の選択肢を許してください。
決してふざけているわけでは無いし、論点はそこではありません。
実は最近TLで強姦に関する白熱した議論が展開されていた中でのこの事件だったので、僕も法学徒として一石を投じてみたくなりました。
ではこれからなぜ小出恵介が逮捕されていないかについて論じてみます。
そもそも強姦罪って何?
第177条
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
だから...これ....何??意味わからん。
って人が多いかもしれません。
まずこの条文に詳しく触れる前に原点の刑法について考えてみましょう。
刑法という法律がある意味を皆さんは考えたことがあるだろうか。
論点はここではないので簡単に書くと、
刑法の存在理由は
『守られるべき利益(人の生命、身体そのもの、財産等)を守るために予防線を張るため』
です。分かりにくいので殺人罪で例えると、
第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
この条文は、
『人を殺したら、最高で死刑にするからな!やばいよね!?みんな嫌でしょ!?だから人を殺したらだめだよ!!』
ということが延々かいてあるのです。
では、先ほどの条文に戻りましょう。
強姦罪の規定は何を守りたいのでしょう?守られるべき利益は何でしょう?
-thinking time-
いろいろな考え方があると思いますが、僕は『身体の自由』だと考えます。
つまり、自分の好きな人とだけsexする自由であり、自分が嫌な相手とはsexしない権利です。
ふむふむ。だいぶ分かってきましたか?
しかし、ここで1つ疑問が。
『ここまでの話は分かったけど、全然逮捕されない理由になってないじゃんW』
その通り。今のところ殺人と強姦には何ら違いがない。
もちろん人を殺せば逮捕される。
じゃあ、強姦罪は逮捕されないの?
もう少しお付き合い下さい。
親告罪という名の最後の番人
実は強姦罪にはもう1つ守っているものがあります。
それは
『被害者のプライバシー』
です。
感のいい人は見えてきましたね。全貌が。
もし仮に、なんのハードルなく犯人を逮捕できるとしましょう。
すると、TVで、『○○市に住む○○容疑者は同じく○○に住む会社員に対する強姦罪の疑いで逮捕されました!』
という報道がされたら、周りでは
『あれってもしかして○○さん?うわー、かわいそう』
ってなるわけです。仮にここを突破しても次のステップが待ち構えています。
裁判です。
裁判で被害者として公然と被害について根掘り葉掘り聞かれる。
全ての被害者に耐えられますか?無理ですよね。
この精神的負担などを考慮して強姦罪にはある規定があります。
被害者からの訴えがなければ公訴されない。
という規定です。つまりは親告しなければ加害者は罰則を受けません。
今回の件で小出恵介が逮捕されていないのは被害者が被害届を出していないから、検察側が公訴できない。
そのため、逮捕することもない、と考えられますね。(逮捕は原則令状がないとできません。令状が発行されるためには基本的に被害届が必要なのです。)
なので現在は逮捕されていなくても、今後逮捕される可能性はあります。
強姦被害は泣き寝入りが多いとよく聞くわけはこれが理由です。
今述べたこの規定、法律用語で言うところの『親告罪』というものにあたります。
これは殺人罪などとは違い、罪の種類を指す呼び名なのですが賛否がわかれそうですよね。
最後に
今回は『被害者のプライバシー』を守っているはずの規定がかえって被害者を苦しめているかもしれないというお話しでした。
皆さんはこの親告罪についてどう考えますか?
以上
(2018/12/28 追記)
刑法が改正され強姦罪は消滅しました。
また、文中強姦罪の保護法益が『身体の自由』であると解される、などと書いてありますが誤りです。一個人の見解と留保を置いているものの一次的な法益は違います。